同友会ニュース−活動報告

『同友会での学びで「何のために」を問い続け 〜「人」の不完全さと多様性を認めた事から始まる「人を生かす経営」〜』2019全県経営研究集会 基調講演報告【19.10.29】

基調講演  同友会での学びで「何のために」を問い続け 〜「人」の不完全さと多様性を認めた事から始まる「人を生かす経営」〜

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報告者:
比嘉 ゑみ子 氏 有限会社やんばるライフ 専務取締役
沖縄中小企業家同友会相談役・中同協障害者問題委員長

始めに

 同友会入会は1997年です。入会してすぐ幹事に、翌年には副支部長、3年目には支部長になり、現在は沖縄同友会相談役です。ダスキンのフランチャイズであるやんばるライフ、就労継続支援A型事業所(株)やんばるステーション、地域の特産品を使った自然派化粧品の開発・販売を行うやんばる彩葉の3社を経営しており、会社のある名護市から沖縄同友会の事務局までは往復約200km、平均で月3000キロ車を走らせ、ひたすら同友会と地域の発展に努めています。

障害者雇用を始めたら社風が変わった

 \;  やんばるライフは1972年の沖縄本土復帰記念日に創業しました。創業20年目に、企業として地域とどう関わり、どのような貢献ができるかと考えていた時に、地元行政主催の雇用フォーラムがあり参加しました。そこで特別支援学校卒業予定の生徒さんが「僕はお母さんを楽にさせるために企業で働きたいです。僕を雇ってください。」と発言したのです。非常に衝撃を受けました。


 これまでも障害のある方たちと関る活動は行っていたのですが、企業で共に働く仲間として迎えるという概念が全くなく、特に自社はサービス業なので障害のある方にお願いできる仕事はないと、実習も雇用もお断りしていました。しかし、このことをきっかけに、2週間の実習を受入れることを決めました。この時の実習生は、乳幼児の頃の虐待の後遺症により片目・片手が不自由で、知的障害があるという重複障害者でした。

 彼を受入れると決めたら、社員さんが自主的に、目が不自由でも働きやすいように倉庫を片付け、整備を始めたのです。それまでどんなに5S活動を推進しようとしてもなかなか進まなかったのですが、実習を受入れたことで社員さんが自ら推進し始めたのです。この実習生は卒業と同時に入社しました。さらに障害者雇用を進めていくために仕事の見直しをしたところ、サービス業でも携われる仕事がいくつもあることに気づき、また、ムラや無駄も見えてきて業務全体の改善・効率化に繋がりました。何より障害のある人がひたむきに働く姿に周りが動かされ、社風が変わりました。障害者雇用拡大のためにフランチャイズ外の清掃部門を新設し、今では8名の障害のある人が働いています。

やんばるステーション開設 〜同友会の仲間・地域と連携して

 障害者雇用を始めたら、多くの就職希望者が来るようになりました。全員を自社で雇用はできませんので、障害者の職業訓練のための「やんばるステーション」を開設し、同友会企業や一般企業への就労に繋げています。

 ここでは公的施設の清掃業務の他、ドリップコーヒーを1杯ずつパッケージにする作業を行っているのですが、これは大阪同友会会員のNPO法人エールジャパンが行っている「エールコーヒープロジェクト」のための商品です。このプロジェクトは、障害者施設でパッケージしたドリップコーヒーを企業に設置、1杯100円で販売した売上を賃金として支払い、障害者の自立支援につなげるというものです。設置企業は80社ほどになり、きちんと給料を支払いできるだけでなく来年は賞与も出せるくらいまでになりました。

 公的施設一棟の清掃業務は、やんばるステーションだけでは対応しきれません。外周清掃部門・水回り清掃部門など、部門ごとにきっちり分けて、一部門をまるごと地域の障害者施設などに依頼しています。元請・下請の形ではなくひとつの建物の清掃を部門ごとにそれぞれが請負う「横請方式」という仕組みを作り、地域内で経済を循環させていく『地域内再投資力』の形成に努めています。

 働くことで障害のある彼らは予想を超えて成長して行きました。自分たちが役に立っていることが分かるとそのことが励みになり、担当業務のスキルを上げたいと思ったり、他の業務もやってみたいと思ったりと職域が広がっていくのです。「役割があること」の持つ力を改めて認識しました。

地域は自分たちで作る

 \;  ある時、名護市長から、落書き・ゴミだらけのトンネルを何とかしてほしいとの依頼がありました。というのも以前私は、地元本部町のゴミだらけの300mほどの護岸をきれいに清掃し、絵を書いて「シーサイドギャラリー」と名付けて美術館にしたことがあったのです。




 今回は地元の高校生にベニヤ板に絵を書いてもらい、同友会の塗装業・建築業の方の協力のもとトンネル内に設置し、「トンネル美術館」を開館しました。そうしたところ、落書きもゴミもなくなったのです。トンネル内の清掃は、自社の社員が毎月定期的に行っていますが、地元企業や地域サークルの方たちも別の日に自主的に清掃をしてくれています。地域のことを自分たちでやると地域の人が繋がってくるのです。トンネル美術館は今年で16年目となり、名護市の街づくりのシンボルとなっています。

 また、やんばるライフと地域の障害者自立生活センターとが連携し、脊髄を損傷した人や筋ジストロフィーの人に海水浴を楽しんでもらう取組み、「フィールドトリップ」を毎年開催しています。参加者は年々増え、広がりを見せています。地域の人が共生社会を作っていくという信念と使命感が地域づくりには必要です。

皆を巻き込んでいくのが「運動」

 障害者雇用を始めた翌年に、沖縄同友会に『健障者(健康に支障のある人の意)委員会』を立ち上げ、その翌年から、障害がある人が地域で働き、地域で暮らすための「雇用・就労支援フォーラム」を毎年開催しています。行政・自治体と連携した実行委員会で開催しているのですが、この様なフォーラムを企業側が開催する初のケースとして注目いただきました。同友会主催ですから補助金はいただかず、すべて手弁当で開催しています。そして、健障者委員会を立ち上げた5年後には障害者問題全国交流会を沖縄で開催すると独断で手を挙げ、結果500名を動員し無事開催できました。

 行動は一人で起こすもの、活動は仲間と行うもの、そして皆を巻き込んでいくのが運動です。周りを巻き込んでいくのが同友会なのです。

最後に

 \;  1981年が国際障害者年と制定され、その翌年には中同協障害者問題委員会が設置されました。数ある経営者団体の中でも、雇用の観点で障害者問題に向き合っているのは同友会だけです。違いを認め合い尊重する「人を生かす経営」の神髄が障害者雇用にあると思います。そして、この10年間で会員数を増やしている団体も同友会だけです。沖縄同友会が組織率10%を達成した時に行政の対応がガラッと変わりました。県の様々な政策に同友会が関わり、政策要望提言懇談会も部署ごとに密に行っています。これからも私たちは運動体として、人を巻き込
んで地域を変えていく活動を推進しなければなりません。

 人は皆、不完全です。その不完全さと多様性を認め合うことが、人を生かす、人間尊重の経営の入り口です。経営者としての覚悟を問う同友会での学びで道が開け、経営者の責任を改めて問い直すことができたと感謝しています。

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