同友会ニュース−活動報告

中小企業憲章・ 中小企業振興基本条例 ~今さら聞けない「憲章、振興条例」のきほんのき~

「中小企業憲章」を知っていますか?

   国が「中小企業は社会の主役である」と高らかに宣言している「中小企業憲章」が存在していることはご存じですか?しかも、政府が閣議決定文書として発表する6年前から同友会が学習制定運動に取り組み、同友会が示した草案と多くの意見が反映された内容となっているのです。
ここで前文の一部をご紹介します。

前文 中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である。(中略)
 政府が中核となり、国の総力を挙げて、中小企業の持つ個性や可能性を存分に伸ばし、自立する中小企業を励まし、困っている中小企業を支え、そして、どんな問題も中小企業の立場で考えていく。これにより、中小企業が光り輝き、もって、安定的で活力ある経済と豊かな国民生活が実現されるよう、ここに中小企業憲章を定める。(後略)

中小企業家同友会は、2000年に制定された「小企業はヨーロッパ経済の背骨である」と明記した「EU小企業憲章」を参考に「中小企業憲章」の草案作成と学習運動に取り組みました。
 日本の総企業数の99%、総雇用数の70%を占める中小企業の活力こそが、国民一人ひとりの幸せと地域社会の活性化を実現させるという考え方から、全国民に中小企業の位置づけを明確に示す指針が必要であるという結論に至ったためです。「中小企業憲章」は意欲ある中小企業が新たな展望を切り拓けるよう、中小企業政策の基本的考え方と方針を明らかにしたものです。
 同友会は、「中小企業憲章」の「国会決議」を目指すとともに、中小企業庁から中小企業省への昇格、中小企業担当大臣の任命などを実現する運動を進めています。

中小企業振興条例制定運動とは?

 同友会では、上記の「中小企業憲章」の精神を地方行政において推進するために、全国の自治体(都道府県、市町村)における「中小企業振興基本条例(以下、振興条例)」の制定運動を会員の手で進めています。埼玉県は、都道府県として全国に先駆けて振興条例が制定されました。
 振興条例は、中小企業憲章の地域実践版であり、自治体が中小企業を軸に産業振興を進めることを宣言するものです。同友会では地域経済の活性化を促す振興条例の制定を各自治体に呼びかけています。
 皆さん、埼玉県の中小企業振興基本条例を読んだことがありますか?ご自身の自治体には振興条例がありますか?まずは、足下の地域を見つめることがスタートです。

◆政策問題プロジェクト 沼田道孝氏 〈㈱第一経営相談所 取締役、大宮東地区会〉インタビュー

  広報委員(以下、広報) 同友会では毎年、憲章や条例の推進月間を設けて取り組んでいますが、今一つ盛り上りに欠けているような印象を受けます。その理由は何だとお考えでしょうか?
沼田道孝氏(以下、沼田氏) 中小企業憲章(以下、憲章)や中小企業振興基本条例(以下、条例)と言うと漢字が多く、なんだか難しい、取っ付きづらいという印象を皆さんお持ちになっているのでしょうね。私自身も憲章・条例というと頭でっかちな運動だと思っていました。中小企業が日本経済の柱だといくら言葉ではわかっていても、実際多くの大学では大企業の戦略が研究され、国の経済に及ぼすその影響力の強さが人々の心に刷り込まれています。グローバル社会において日の当たるのは大企業であり中小企業は日陰の存在という印象が強いのが現実だと思います。そういったことが影響しているのではないでしょうか。

  広報 そのような印象を持っている方々にまずお伝えするとしたら?
沼田氏 そうですね。中小企業家同友会全国協議会(以下、中同協)が本気だってことですね。今年、憲章推進月間のキックオフ集会に初めて参加しましたが、中同協は中小企業が社会の柱にならなければならないと掲げ、憲章の国会決議と中小企業庁の「省」への格上げを正面から本気で目指していました。
 これには正直言って驚きました。これは今まで続けてきた運動の成果に中同協が自信を持ててきたことの現れだと思います。同友会運動は政治的には中立という立場を通していますが、自分たちの運動が社会を動かす力を持ち得るという確信が生まれてきたということではないでしょうか。
 また、具体的な地域の取り組みとしては、中小企業の振興や地域づくりというと、地元の製品を使った新たな仕事づくりというようなイメージを思い浮かべてしまいますが、条例を利用し、「未来デザインゲーム」という教材を開発して学校と連携して将来を担う人づくりに取り組む愛媛同友会の例などが報告されていました。こんなことまでやっていいのかという点ではまさに目からうろこでしたね。
広報 そういった動きまででてきているのですね。今までの運動という話がありましたが、同友会と憲章、条例とのこれまでの関わりについて教えていただけますか。
沼田氏 今でこそ憲章・条例が一体化した運動となっていますが、初めは高齢化などで中小企業の廃業や流出により、このままでは地域として立ち行かなくなってしまうと危機感を持った各地の自治体で、中小企業の振興策を実施するために条例を制定する動きが起こりました。1979年に墨田区が最初に条例を制定しましたが、当時私も墨田区の繊維関係の仕事をしていて、急速な高齢化により工場が次々と廃業したり移転していく様を見てきました。
 その後、1999年に中小企業基本法が改正され、地方自治体が中小企業振興に責務を有すると定められてからこの動きが加速し、各地同友会でもこの動きに関わるようになりました。ちなみに都道府県レベルでは埼玉県が2002年に全国に先駆けて条例を制定しています。

  広報 まず条例が先だったのですね。恥ずかしながら憲章の閣議決定後、条例制定が始まったと思っていました。
沼田氏 中同協が憲章を意識したのは2000年6月にEU(ヨーロッパ連合)で採択されたヨーロッパ小企業憲章が紹介されてからでした。これはヨーロッパの経済戦略の中核に中小企業を位置づけたものでした。実際EUでは、中小企業が増え多様化し元気になることで国のGDPを押し上げている等の情報を得て、中同協でも現地を視察するなど研究が始まりました。「三つの目的」を掲げて運動を続けてきた中同協にとってこれはとてもしっくりくる内容だったのだと思います。
 その後、2003年から国での憲章制定と地方自治体での条例制定を活動方針に掲げて各方面への継続的な働きかけが行われてきました。ちょうど、それを支持してくれる政権への交代がありそのタイミングで閣議決定がされたというわけです。運動を始めてから数年間でここまでできたことは、金融アセスメント法への取り組みと相まって中同協には大きな自信につながったと思います。
広報 改めてですが憲章・条例を推進する運動に取り組む意義は何なのでしょうか?
沼田氏 まず憲章や条例が日本になぜ必要かということですが、先ほども申しましたが、経済の中心は大企業というイメージが強い中、中小企業こそ日本経済の柱であると国民に理解してもらわなくてはなりません。柱なのだから中小企業が発展することが国民にとってプラスであり、それを行政等が支援する必要があると国民に対して示さなくてはならないということです。
 次に先進国では日本だけである中小企業が減少しているという現象をくい止めるためには中小企業の存立基の再構築を図る必要があるという認識を広く持たなくてはならないということ。
 また、厳しい経済環境におかれている地域、特に郊外ですが、その再生のために憲章・条例という共通認識を持つ必要があるということ。最後に、日本の経済の量的成長から質的成熟への転換期にあたり、中小企業が活躍する舞台が整ってきたことを広める必要があるということ。そんなところだと思います。
広報 それでは、これから運動に関わっていく会員の皆様にメッセージをお願いします。
沼田氏 日本経済を支えているのは自分たち中小企業であり、その自分たちが元気でいるためにはどうすればいいかという要望を行政に聞いてもらい政策を立案してもらうために役立つのが憲章であり条例だと思います。
 私たちは自分たちだけ生き残ればいいと言っているのではありません。自分の会社だけでは存立しえないのが中小企業であり、地域の皆と一緒に持続可能な経済を築くために積極的に関わっていっていただきたいと思います。身近なところでは、民間と行政が意見やアイデアを出し合い素晴らしい取り組みをしている深谷市の例もあります。ぜひ参考にしてみてください。

◆深谷市産業振興部 部長 吉田二郎氏 インタビュー

  条例は実行しなければ意味がない!
地域の声を聞き、施策に活かす


 8月24日、中小企業振興基本条例について先進的な取り組みを実践している深谷市に取材に行って来ました。深谷市では産業振興部が中心となって地元が元気になる施策を次々と打ち出しています。その仕掛けの中心人物が産業振興部の吉田二郎部長。市役所に入る前はスポーツ用品店で働いた経験があり、商店主の立場や考え方もわかる人物です。

【深谷市産業振興条例制定】

 2014年に産業振興条例を作りました。この条例は深谷市の産業振興に関する経営指針です。吉田部長曰く、「自治体が条例を作っても冊子にして配って終わることがほとんど。条例は実行しなければ意味が無い。そこで条例を作った時、職員が市内すべての業者を回って市に期待する要望を聞いて回り施策に活かしました」。深谷市では条例を作る前から市の主導で地域振興を行ってきましたが、条例を作ったことにより、より強力に産業振興を進めることが出来るようになりました。

  【ゆるキャラで産業振興】

 吉田部長は産業振興部に配属された2011年から大胆な仕掛けを次々に実施。まず着任早々、地元のゆるキャラ“ふっかちゃん”をデザインした大型トラック「ふっカーゴ」を用意し、全国各地にイベント出張に行きました。
 トラックはそのまま特設ステージにもなるので大勢の人が見学に来ます。その場に集まった人たちに、深谷市の特産品の販売を行い、ゆるキャラを通じて深谷市をPRして回ります。深谷市内に入ると市の施設以外にもいたる所でふっかちゃんを目にすることができます。関連グッズの売り上げは年間43億円。地元のゆるキャラを地域の産業振興に活用しています。

  【深谷えん旅】
 観光誘致と地元商店の活性化対策として「深谷えん旅」を2012年から実施。これは直接店に人が来て体験講座が出来るイベントです。参加者はホームページ情報やパンフレットから自分が参加したい体験イベントに申し込みます。期間は約2ヶ月間で今年も9 月17日から11月30日まで開催し、各店舗で76のイベントが開催されます。年々リピーターが増えて、参加する店も増えて
来ました。
 一か所に店舗を集めた特設会場で体験イベントを行っても、イベントが終わると参加者はその店まで直接足を運びません。そこで実際に自分たちの店をイベント会場にしてお客さんに来てもらい、体験講座を通じて店と人間関係を作り、店のお客さんにもなってもらおうと言う企画です。
 このイベントは毎年店主たちが実行委員会を開いて何度も会議を重ね、深谷市と店に人が来て楽しめる企画を考えて実行します。市はホームページや無料配布のパンフレット作成の裏方に徹します。パンフレットに載せる記事や写真が集客に影響大ですから、内容のチェックや綺麗な写真が撮れる写真講座も市が実施しています。
 店側から相談の電話を受けた時は、電話で要件を済ませずに必ず職員が直接店を訪問するようにと吉田部長が指導しています。直接店の人と会って話すことでコミュニケーションが生まれます。

  【深谷ベース(FUKAYA BASE)】

 2013年、区画整理地を有効活用するため移動・撤去が容易なコンテナで市民が自由に利用できるスペースを作りました。基礎も含めて移動が可能なトイレ付きコンテナ6棟を設置した広場で連日コンサートやバーベキュー・屋外映画上映・縁日・各種セミナー開催と、多くの市民が利用し、にぎわいを見せています。区画整理の工事が始まれば、コンテナごと別の場所に移動して市民のコミュニティスペースを作ることができます。

 これ以外にも多くのイベントを市が企画し実施しています。印刷物や配布するパンフレット、そのデザインやロゴも全て吉田部長はじめとする産業振興部内で作っているので参加業者のコストはかかりません。中小企業の声を聞き上げながら、協働して地域づくりに取り組んでいく行政の姿勢が表れています。

▲ このページの先頭にもどる

携帯対応について